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インタビュー

2014年4月10日

プロフィール

片桐 大智 
(株式会社セガ 第2研究開発本部 スペシャリスト)

かたぎり だいち◎1968年生まれ。1992年 に株式会社セガ・エンタープライゼス (現:株式会社セガ)に入社。 株式会社セガ 第二研究開発本部  アーケードゲームを中心に開発に携わる。代表作は『デイトナUSA』、『バーチャファイターシリーズ』、『ファイティングパイパーズシリー ズ』、『ソニック・ザ・ファイターズ』、『ファイターズメガミック ス』、『アウトトリガー』『アウトラン2』など。

――    『バーチャファイター』の開発に関わられたキッカケを教えてください。

片桐大智(以下、片桐)    僕が『ストⅡ』(『ストリートファイターⅡ※1』・カプコン)上手かったのが最初のキッカケです。謎ですよね(笑)。社内に研究用として『ストⅡ』が置いてあったので、昼休みにみんなでやっていたんですけど、そこで先輩方をボッコボッコに倒していたら、「今『バーチャファイター』っていうのを作っているから、格闘ゲーム上手いんだったら話を聞かせてよ」って(鈴木)裕さんに言われて。『ストⅡ』だったらこういう部分が面白いとか、こういう駆け引きが楽しいとか、そういう話をさせてもらいました。

――    それで『バーチャファイター』の開発に関わるようになったと。

片桐    『1』を作っている最後の方になると、裕さんに誘ってもらって、操作方法を教えてもらいながら一緒にプレイしました。そこで、『ストⅡ』で面白い要素の中で『バーチャファイター』でも活かせるものがあれば提案したり、アイデアを色々出させてもらいました。開発として本格的に、というのは『2』でプログラマーとして参加したところからですね。プログラマーとして入ったんですけど、ゲームがとても好きだったから技の調整とかもかなりやらせてもらいました。『3』でもプログラマーとして参加していたのですが、新機能について裕さんと話をして詰めていくほうが多くなっていきました。

――    徐々にゲームの核となる部分に携わるようになっていったんですね。

片桐    『4』が出るとなった時にはゲームディレクターとして携わることになりました。『バーチャファイター』の新作をどんな感じで作っていくか、という部分を考える側になりましたが、考える時間の多くはバトルのシステムとキャラクターに追加する新規要素でした。後半になると技の調整が多かったですね。『5』ではさらにゲームに特化した部分での調整だとか、キャラクターの案出しであるとか、そういった携わり方になりました。プログラマーからゲームデザインとモーション、そこからゲームのディレクション、と変遷してきていますね。

――    『1』から関わり続けてきて、『バーチャファイター』という作品を開発者としてどう見守ってきましたか?

片桐    プレイヤーがVFをどのように遊んでいるかを常に気にしていたので、とにかくゲーセンに通っていました。『1』『2』の頃だったら新宿の『スポット21』という聖地があったのでそこに行ったり、大会があれば各地に赴いたり。それこそ、大門ラウさんっていうすごいラウ使いがいるっていうんで関西まで行ったりもしました。なるべく足繁く通って、こんな風にしてみんなが遊んでいるんだっていうのを把握しようとしていましたね。『バーチャファイター』以前のゲームでも上手い人っていうのはいましたけど、プレイヤーの名前が知れ渡ることって中々なくて、でも、『バーチャファイター』では池袋サラとか新宿ジャッキーという地名+キャラ名でプレイヤーの名前が知れ渡りましたよね。プレイヤーが自分達で盛りあがっている感じが新しいなと思っていました。

――    これまで『バーチャファイター』に関わってきた中で最も衝撃的だったことはなんですか?

片桐    シーンとして見ると、やはり『2』の時にブンブン丸さんとか池袋サラさんとかがテレビに出たことですかね。ゲームが上手いとテレビに出られて、そのシーンかなり盛りあがっているっていう状況が衝撃的で。現場にも行かせていただいたんですけど、デカいセットが組まれている中、スモークが焚かれる中からスターのようにプレイヤーが登場して戦っているっていうシーンは今でも覚えていますね。取りあげる規模やメディアは変わってきていますけど、プレイヤーが脚光を浴びるという文化は今にも繋がっていると思いますし、そういった土壌が出てきたことが衝撃的でした。ゲームをやって面白かったね!だけではなくて、そこからまだまだ道が繋がっているような感じが得られて、様々なコミュニティができてみんなが集まって色々な話ができる場ができたのがすごく良かったと思います。 個人的な事で言えば、開発者というと裏方の仕事だと思っているのですが、『バーチャファイター』に携わっていたおかげでたくさんの著名な方にお会いできて色々な話を聞けたことも衝撃的というか、とてもプラスになる経験でした。

――    コミュニティと言えば、公式以外に有志による大規模な大会文化が根付いているのも『バーチャファイター』の大きな特徴と言えます。

片桐    『5』を作った時に、大会モードに5対5があった方が良いんじゃないかという話が出るくらいには認識しています。結果、費用対効果の問題などもあって残念ながら実装はできませんでしたけど。あの大会の熱気、アングラ感の楽しさっていうのは公式では出せない部分だと思いますし、あのような大会もあったからこそより盛りあがったんだろうな、と思っています。実は最初の頃に僕も出たことがあります(笑)。とても熱気があって楽しいだけでは言い表せない何かがありますよね。

――    プレイヤーにとっては今後の展開というのも気になる部分だと思いますが。

片桐    20周年記念イベントの時に言ったので覚えてる方もいらっしゃるかもしれないで すけど今までの格闘ゲームになかった新しい表現の研究をしているところです。その新しい表現が何か次につながらないかと思っています。ひょっとしたらみなさんの思っているものに繋がるかもしれないですし、それとは違う形かもしれないです。けど、何かしら出せるようにはしたい!と日々頑張っていますよ。

(20周年を迎えた『バーチャファイター』へのメッセージ)
アーケード、家庭用問わずに『バーチャファイター』をこれまでやってきてくれた人達へは本当に感謝の気持ちでいっぱいです。愛情を持ってプレイしてくれているというのはこちらもヒシヒシと感じているので、そこに対して何かできないかな、というのは常々考えています。形になるかどうかは私達だけの問題ではなくなってしまうので断言はできませんが、そういったことを諦めていない人達は結構いるよっていうのは伝えておきたいです。プレイヤーのみなさんも開発スタッフも同じ気持ちだと思います。みんなとまた「こんなゲーム出ましたけど、どうですか?」って言える日が来るようにしたいですね。
(注釈)
※1 1991年に稼動開始の2D対戦型格闘ゲーム
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