2014年3月12日
山岸 勇 (VFR BEAT-TRIBE CUP 主催)
やまぎし いさむ◎『バーチャファイター』プレイヤーにとって、その存在を知らぬ者はいない大会と言っても過言ではない、「VFR BEAT-TRIBE CUP」を主催。前身である「アテナ杯」の第1回開催が1994年、そこから20年におよびプレイヤーとともにシーンを支え続けている。現在は東京レジャーランド秋葉原店に勤務。
―― VFR BEAT-TRIBE CUP」(以下、BT杯)は歴史ある大会ですが、最初に『バーチャファイター』で大会をやろうと思ったのはどうしてですか?
山岸勇(以下、山岸) 「ゲームスポットアテナ」があった町田は、ハイスコア文化のど真ん中にあって、競い合う下地というのができていました。最初はハイスコアの対象だったストⅡ(『ストリートファイターⅡ(※1)』・カプコン)が次第に対戦で盛りあがるようになっていって、大会をやるようになって。それで大会の面白さというのもある程度わかって、その流れで「アテナ杯」をやろうという流れになりました。
―― 大会は、なぜ団体戦にしたのでしょうか。
山岸 「アテナ杯」以前にやっていたものも大体が団体戦でした。ストⅡも5on5とかでやっていて。ハイスコアも店対抗みたいな意味では団体戦だし、団体戦だから大会をやっていたというくらい、個人戦の大会をやる発想がなかったですね。「アテナ杯」も最初は団体戦とは別に個人戦もやっていたんですけど、「もういいかな」みたいな流れで自然とやらなくなりました。団体戦のおもしろさっていうのを、プレイヤーも感じていたんじゃないですか。
―― 「アテナ杯」は初期から映像記録も残っています。現在においては資料的価値も高いと思いますが、なぜ記録しようという発想に至ったのでしょうか。
山岸 当時から「ゲーメスト」(新声社から発行されていたアーケードゲーム情報誌)のスタッフがいっぱい出入りしていたこともあって、映像を残したほうがいいと言われたのもありますね。大会映像の記録を残す場合、普通はゲームの画面と音声を録画するんですけど、バーチャは3Dだから2Dのコンバーターだと映らなくて。そのまま大会の日にちが近づいてしまったので、最終的に手撮りという発想になりました(笑)。
―― ゲームのみの映像より、大会自体の雰囲気も伝わってくる映像になりましたよね。
山岸 逆に良かったのかもしれないですね。2Dの映像は"how to"で見ることが多いんですけど、3Dはその空間自体がライブのようでエンターテインメントなんですよ。技術的にはすごいことをやっているんですけど、プレイを見て楽しむっていう文化がありましたよね。「アテナ杯」は盛りあがっていたし、外野の音は絶対入れなきゃダメだよっていう考えになって、映像は悪くてもいい、外野の音を入れようっていう判断はだいぶ早くからやっていました。大会に関して、今でもひとつの自慢と言えるのが、ディファ有明で初めてゲーム大会をやったことです。普段プロレスやボクシングをやっているような会場なので、電圧が足りなかったり、いろいろ苦労はありましたけど(苦笑)。
―― 「ゲームスポットアテナ町田店」という、町のゲームセンターの大会からはじまって、クラブやディファ有明を借りてのイベントへと規模が拡大するにあたって苦労はありましたか?
山岸 2回目くらいから参加者が100名超えていて、周辺からのクレームがきたり大変でした。店員3名くらいでやっていたんですけど、これは無理だと。最初がお店のゲーム大会ですから、記録係とか映像スタッフとかっていう発想がなかったんですけど、この頃から大会運営に対する意識が変わっていきましたね。こっちの準備が整う前に人が増えてしまったという状況で、それくらい『2』の勢いは凄かった。人数的には『4』や『5』の方が多いですけど、熱量というか、オリジン的なところで『2』はやっぱり凄かったですね。
―― 当時と今とでは、大会に参加する客層や雰囲気は変わりましたか?
山岸 ネットがない、ケータイがない時代から考えると、変わった部分もあるのかもしれないですけど、根っこは全然変わってない。コンボ入った時に「ハイハイハイハイ」と言っているのも、あれ、第1回からやっていますから。基本的に町田の常連が体育会系しかいないんですよ。浮いた、コンボ繋がる、なんか声出そうみたいな(笑)。2Dの大会と圧倒的に違うのはそこですよね。2Dは誰が一番強いかに重きを置いているから静かにしてやることが多いけど、バーチャってその場を楽しみたい気持ちが強いんだと思います。団体戦だから1人強くて他はそうでもないっていう場合もあって、いろんな人が上に行けるチャンスがあるし、勝った負けたを繰り返して大将戦になればやっぱり盛りあがる。バーチャのゲームバランスというかシステム上、あまりワンサイドになることもないから、バーチャと団体戦の親和性が高かった、非常に相性が良かったですよね。それと、市川のクラブでイベントをやった時に飲みながらバーチャを見るという文化が生まれたことも、1位決定戦からフェスタのノリになっていった一因かもしれません。そこから何か質が変わってきた気がしますね。場が楽しいというか、BT杯にはバーチャやってない人もきますからね(笑)。
―― 長年シーンの中心にいて、プレイヤーの変遷というのも見てきていると思いますが。
山岸 うまい具合にスターが入れ替わっている印象がありますね。バージョンが変わるタイミングとリンクしていることが多いですけど、ずっと同じ人が勝っているっていうのは……ホームステイアキラ強いな(笑)。一部例外みたいのはいますけど、変遷していってうまく世代交代になっていて、だからこそBT杯にあれだけ人がくるのかなって思いますね。今はバージョンがずっと止まった状態なんで、新しいの出て欲しいですよね。僕らにとっては思い出話じゃないんですよ。今もやっているんです。プレイヤーもそういう気持ちを醸し出しているじゃないですか。いろいろ大変だとは思いますけど、プレイヤーはずっと待っているんじゃないですか?