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インタビュー

2013年12月26日

プロフィール

早矢仕 洋介 (株式会社コーエーテクモゲームス)

はやし ようすけ◎1979年生まれ。2001年テクモ株式会社入社。 株式会社コーエーテクモゲームスソフトウェア事業部所属。 Team NINJAリーダー。『デッドオアアライブ5』プロデューサー。

 
高校生の頃に一番遊んだゲームが
『バーチャファイター』だった

――    『バーチャファイター』が登場した頃は、早矢仕さんもまだゲーム業界に入る前だったと思いますが。

早矢仕洋介(以下、早矢仕)    強烈に覚えているのが、高校生の時にセガサターンと一緒にセガサターン版の『バーチャファイター2』を買ったことです。学生ということもあってあまりお金がなかったから、ゲームセンターに行ってはいたものの、本格的には遊びこめませんでした。なので『2』の家庭用が出たっていうのが『バーチャファイター』との出会いとしては一番大きかったですね。友達とずっとやっていて、僕等の周りではジャッキーとサラを使う人がいっぱいいました。そのうち、雑誌で強い人達がいるっていうことを知っていったりっていう思い出があります。それが一番最初の『バーチャファイター』との思い出ですね。

――    ゲームはかなり遊んでいたのでしょうか。

早矢仕    中学校の時にストⅡ(『ストリートファイターⅡ(※1)』・カプコン)が出て、みんな友達の家に集まって遊んでいました。そんな感じで高校生の頃に一番遊んだゲームが『バーチャファイター』です。その当時って、そのコミュニティの中で誰が一番強いかが重要だったので、ガードがしっかりできて、ちゃんとそこから返せれば勝てるくらいのレベルでした。ジャッキーのパンチハイキックとかビートナックル、サマー(サマーソルトキック)を決めたりっていうのだけでずっと盛りあがってましたね。あんまりうまくはないけど、格闘ゲームがずっと自分の周りにあって、今こうして格闘ゲームを作らせてもらってるっていうのはありがたいですよね。

――    格闘ゲームを作る側になった時に、『バーチャファイター』から影響を受けた部分というのはありましたか?

早矢仕    旧テクモに入社したのが2001年で、その時に『デッドオアアライブ3』というタイトルを作っていて、かかわることになりました。『デッドオアアライブ』自体は友達の家で少し触ったことある程度だったんですけど、開発に入って改めて触れてみて、ボタンレイアウトがバーチャファイターと一緒だったりと、『デッドオアアライブ』自体が『バーチャファイター』があったからこそ存在したシリーズだったということを感じました。影響を受けた部分というか、これはもう時効だから良いと思いますけど、僕等は『バーチャファイター』を研究するためにいろんなことをしていました。『デッドオアアライブ3』が出る時には『バーチャファイター4』がアーケードで出ていて、家庭用も出ていないから最先端を見に行くためにスタッフみんなでゲームセンターに行ってレポートを作るということをしたり。それを基にどうやって勝とうか、みたいな話をしていたりと、『バーチャファイター』を見ながら『デッドオアアライブ』を作っていました。『バーチャファイター』の最新作が出るたびにキャラの数だとかステージ、新キャラの拳法とかをデータベース化して研究していましたね。以前にもインタビューで答えたことがありますけど、『デッドオアアライブ3』に雪ステージがあるのは『バーチャファイター4』に雪ステージがあるからであったり、水で濡れるステージがあるのは、『バーチャファイター3』で水の表現が綺麗なステージがあったからなんです。

――    『バーチャファイター』を参考にしたうえで、『デッドオアアライブ』流にアレンジしていったと。

早矢仕    『デッドオアアライブ』は、『バーチャファイター』のカウンターというか、逆を攻める作り方というのをしてきました。『バーチャファイター』には技を習得する喜び、出せる喜びみたいなものもあると思うのですが、『デッドオアアライブ』は先行入力やディレイを利くようにして、適当に押しているだけでも技が繋がるようにしています。現在の『バーチャファイター』はフラットなステージで壁での攻防に重きを置いている印象がありますけど、反面、『デッドオアアライブ』では見た目重視でアンジュレーション(地形の起伏など)を入れて、エンターテインメントをどれだけ突っ込めるかに重きを置いている。『バーチャファイター』を見ながら作ってはいるものの、多分これからもどんどん離れていくんだと思います。

 
両方のファンに喜んでいただける
幸せなコラボレーションになった

――    そして『デッドオアアライブ5』では『バーチャファイター』とコラボすることになりました。

早矢仕    私がプロデューサーとして『デッドオアアライブ5』を立ち上げようという時に、久しぶりのナンバリングタイトルということもあって、どうしても大きな話題を作りたいと思いました。ボタンレイアウトも一緒だし、みんな『バーチャファイター』を見て作ってきていたので、『バーチャファイター』のキャラクターに出ていただけないかとセガさんに相談をしたらOKを出していただいて。『バーチャファイター5』のモデルとモーションデータをお預かりして入れられる。高校時代に遊んでいて、なおかつ自分達の作っているゲームじゃないものが、自分達の作っているゲーム画面で動かせるということに興奮しました。我々世代かそれ以上の開発スタッフはみんな興奮していましたね。

――    アキラ、サラ、パイ、ジャッキーを登場させようというのは、どのような理由で決められたのですか?

早矢仕    そこに関しては、私が『バーチャファイター』の『1』『2』を触っていた時に思い入れの深いキャラクターを、プロデューサー権限で入れさせていただきました(笑)。『デッドオアアライブ5アルティメット』でジャッキーが追加されたのは、アオイとかアイリーンという声もチーム内にはあったんですけど、『デッドオアアライブ』には女キャラクターはたくさんいるし、私自身がジャッキーから『バーチャファイター』の遊び方を学んできたということもあって、初心者に「バーチャファイターとは」というのが伝わるキャラクターが欲しかったというのもあります。

――    コラボレーションに対して、ユーザーの反応はいかがでしたか?

早矢仕    コラボレーションをする前に『バーチャファイター』のファンのみなさんに「こういうのもアリだよね」というように思ってもらえないとダメだと考えていました。そういうレベルでは評価していただけたと思うので、非常にありがたいなと。『デッドオアアライブ』ファンも、そもそも『バーチャファイター』に勝ちたくてはじめたタイトルということを知ってくれていた方が多く、好意的に受け取ってくれた方が多かったです。両方のファンから評価していただけたので、すごく幸せなコラボレーションになったなと感じています。大会でアキラ使いの方が決勝に行ったりすると「これ、『デッドオアアライブ』の大会なんだよな」って思うんですけど、それも込みで良いコラボレーションというか、特別なんだけど、『バーチャファイター』のキャラクターが『デッドオアアライブ』の世界の中で活躍してくれているというのは、我々としても良かったなと思っています。

――    『バーチャファイター』とのコラボレーションを企画して、開発する中でのエピソードはありますか?

早矢仕    作っている中で、『バーチャファイター』のキャラクター達は『バーチャファイター』のルール上で最も輝いている、システムと一緒になってキャラクターができあがる、という感じを受けました。違和感のない入力で動かせる必要性というのはすごく感じたので、そこは『デッドオアアライブ』の世界に入ってもらうにあたり、こだわったところです。面白いエピソードで言うと、開発中、『バーチャファイター』とコラボレーションするっていう話を知らないスタッフがいた段階の時があったんです。それで、実機上にかすみとアキラが出はじめた時に、「なんでこいつがいるんだ」と思った若いスタッフが「状況がわからない、早矢仕は何かいけないことをしている気がする」って言っていて(笑)。いやいや、これはセガさんから正式にお借りした本物だよと。スタッフに対してもサプライズができたというのは良い思い出ですね。あと、『デッドオアアライブ5アルティメット』を出した時に、ゲーム完成前にコンボチャレンジっていう全キャラクターに用意している難しいコンボのお題が正常に繋がるかの確認をしていたんですけど、アキラのコンボの中にK+G同時押しからGを1フレームで離さなければいけない提膝弾腿(ていしつだんたい)が、バーチャファイターの技入力のまま入っていたんですけど、誰も出せなくて。スタッフの中に唯一いたアキラ使いのスタッフがたまたまその日休みで、その日のうちにどうにか確認しないといけないから開発スタッフがみんな泣きそうになりながらやっていました。

――    最終的には出せたのでしょうか。

早矢仕    結果的になんとか出せました。休んだスタッフはあまり分かっていないですけど、周りのスタッフに恨まれていましたね(笑)。うちの開発には格闘ゲームが得意なスタッフが多いですけど、そのスタッフ達が全然出せないコンボがあるという部分でも、『バーチャファイター』というシリーズが背負ってきた方針とかポリシーを感じました。最近では簡単に出せるけど奥が深いというものが増えてきている中で、技を出すことにここまでのハードルを設けるというのは稀有な存在だなと。コラボレーションさせていただく中でいろいろな化学反応をさせていただいたので、『バーチャファイター』側から何かあれば、我々もぜひ一緒にやりたいなと思っています。

(20周年を迎えた『バーチャファイター』へのメッセージ)
学生の頃にハマったゲームから、コラボレーションさせていただくプロデューサーというところまで、20年のあいだ、私の人生にかかわり続けてきてくれたタイトルで、20年積み重ねてきた先に、さらに未来にどういう進化をしてくれるのかというのは、一ファンとして楽しみにしています。ゲーム開発に携わるようになってからも、『バーチャファイター』を超えようとみんなでゲーム開発を続けてきたというのもありますので、我々の届かない先を『バーチャファイター』シリーズで見せてもらいたいなと楽しみにしています。
(注釈)
※1 1987年に稼動開始の対戦格闘ゲーム、およびこれを第1作とする対戦型格闘ゲームのシリーズ
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